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アーサー・ケストラー「真昼の暗黒」再刊に寄せて

 私が青春時代を含めて最も影響を受けた人物が、アーサー・ケストラーです。まだ現代では、彼の作品は完全に評価され切っているとは言えません。一方で彼ほど毀誉褒貶が著しく、評価の分かれている作家も珍しい。

 しかし、この度、「真昼の暗黒」が岩波書店から完全新訳として再刊されたのは、大いに意義があります。残念ながら、訳者の中島賢二氏は翻訳終了後、2009年4月に本書刊行を目前にして故人となられました。

 本書の解説を執筆されたのは岡田久雄氏という人ですが、最後のページにこうあります。「ケストラー、そして本書は十数年、訳者がこだわっていた作家であり作品である」。 実は私もこだわっていた一人です。他でもなく、先にご紹介した私の小説「ヤヌスの陥穽」という本の、「ヤヌス」というのは、アーサー・ケストラーの「ホロン革命」原題「Janus」から取ったものなのです。

 ヤヌスとはローマの二面性の神の名です。その陥穽とは、二面性、すなわち二元性の落とし穴の事を指していたのです。我々はいま2012年の12月21日(奇しくも私の誕生日)のマヤ歴の終了日に向けて、苦難の歴史を刻一刻と刻み続けています。その意味するところの「陥穽」からの脱却こそ二面性(ヤヌス)の陥穽からの脱却に他なりません。それは、次元上昇=アセンションという事です。

 本書、真昼の暗黒に戻りましょう。この本は、スターリン時代のモスクワ裁判と大粛清を暴いた戦慄の心理小説です。私は、ソ連共産主義の欺瞞、その背景、ナチスドイツとの関わりに関心がありました。皆さんもご一読をお勧めします。少なからず知的好奇心を刺激される筈です。

 しかし、岩波書店は大出版社であり、保守的傾向は否めません。この本の最後にケストラーの著作とその業績の解説が書かれていますが、一つだけ欠けたところがあります。それは、宇野正美氏訳で刊行された「ユダヤ人とは誰か=十三支族・カザール王国の謎」という著作が省かれているのです。訳者の宇野正美氏は評価の分かれている人物ですが、そうかと言って、訳文がまったくの誤訳であるはずがありません。この本の内容は、全世界に衝撃を与えるものであり、ユダヤ人のいわばタブーに触れるものだからです。

 また、私はケストラーの多くの著作に啓発されました。先に述べた「ホロン革命」だけでなく、サンバガエルの謎(サイマル出版会:刊2002年岩波文庫から再刊)も面白い本です。「還元主義を超えて=68’アルプバッハ・シンポジウム」を主宰した記録も注目すべき作品です。

 彼は1983年、夫人と共にイギリス安楽死協会に共鳴して、自宅で自殺しているのが見つかりました。この本の解説に、最後まで人騒がせな人だった、とあります。しかし、さらに人騒がせなのは、ユダヤ人であったが故にユダヤ人のタブーを敢えて告発し、一説には暗殺されたのではないか、という噂まで付きまとうという、死亡してからも人騒がせな人物だったのです。

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