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再び年金制度の問題点を考える

 株価が一進一退を続けています。6月末で単年度10%前後のリターンを計上していたものの、7月に入ってからの下落により、信託銀行と生保等の受託機関は軒並みマイナスリターンを示しはじめ、わずか半月でほぼ四半期分の半分のリターンが消えました。

 いま年金制度は大きな曲がり角を迎えています。そもそも、日本の年金制度はそのほとんどが確定給付型年金であり、あらかじめ給付額を決定しておいてから、掛け金を設定しているのです。

 特に基金型の企業年金はこの傾向が強く、設定した利回りが予定より大幅に下回る傾向がここ2年間続いており、最近の3年連続のマイナス運用と併せて、基金財政を大きく蝕んでいます。このため、本来なら掛け金を引き上げるのが決められたパターンですが、企業業績の極端な悪化により、掛け金を引き上げるどころか、企業年金そのものを脱退したいというところが増えています。ところが、いざ脱退するとなると、巨額の脱退掛け金の負担を求められ、止むを得ず続けているのが現状なのです。これは、基金制度を脱退すると、現加入員の負担は減りますが、既に引退した年金受給者はそのまま引き継ぐことになり、残った加入事業所が脱退した企業の年金受給者の支払いまで負担しなければならない不公平を解消するため、脱退時に一定の掛け金負担を義務付けているためです。そのため、止めるに止められない制度になっているのです。これはある意味で、制度上仕方がありません。

 実はこのような矛盾は想定の範囲内だったはずですが、この数年来の経済の落ち込みはこの想定の範囲をはるかに超え、日本経済を直撃しているのです。現在の予定利回りは、年3~4%程度の経済成長を基準にしており、この数字が既に高すぎるという指摘が年金関係者から出されています。ちなみにここ1~2年の経済成長率はマイナスに落ち込んでいます。

 国の年金制度は賦課方式を取っていますから、掛け金はすべて給付に廻されます。従って3年も掛け金が予定通り集まらないと、給付が行えなくなります。そのため、数年おきには再計算して給付の見直しと支給年齢の引き上げ、給付額の削減を国の法律改正により強制的に行っています。もし、給付の原資が不足すれば、税金で賄うしかないわけです。

 しかし、企業年金は、厚生年金の一部を代行給付している部分は除いて、給付の削減には大変厳しい条件が付けられています。そのため、ほとんどの基金が予定利回り(加算部分)5.5%に据え置いたままなのです。それは、予定利回りを引き下げると、必然的に掛け金を引き上げることが義務付けられるからです。

 ところが、掛け金を据え置いたまま予定利回りを引き下げますと、給付に要する資産が減少する訳ですから、不足金がだんだん積み上がります。止むを得ず給付を引き下げようとすると、年金の受給権が存在し、厳しい給付引き下げの条件をクリアするだけでなく、受給世代(既に引退した世代)の支給原資を誰が負担するのか、という問題が生じ、その分現役世代の将来の年金額が極端に減少せざるを得ません。世代間の不公平がここで顕在化してくる訳です。

 要するに、既に現在の年金制度は様々な面で制度疲労を起こしており、もう是正するのは不可能に近いのです。この事を見据えて行かないと、年金制度は破綻します。その現実はもうすぐそこに来ているのです。

 ただ、基金型の企業年金にもメリットがあるのです。それは、年金資産が積み立て型である事です。これは、国の厚生年金の代行部分を含めて、将来の給付のための資金を積み立てて置く制度だからです。その期間は約15年程度です。そのため、仮に明日から掛け金が一銭も入らなくても、給付が直ちにストップする訳ではありません。今のように国の厚生年金が掛け金ゼロに陥ると、厚生年金の給付は全額税金で賄わなければならないのと大違いなのです。極端にいえば、厚生年金は国が破綻すれば、直ちに給付がストップします。企業年金はそんな事はあり得ません。

 いずれにしても、年金制度は、企業年金も厚生年金も大きな曲がり角に来ている事は確かで、われわれはこの事を考慮に入れて次の政府の選択をしなければ、将来は悲惨な事になるのを覚悟する必要があります。

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